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2009年1月 創刊号

創刊のご挨拶

はじめまして。グリーンウッドスキンクリニック院長の青木律(あおきりつ)と申します。この度近隣の皆様に正確な医療情報を提供し、健康で快適な毎日を送っていただくためにグリーンウッドクリニックニュースを発行させていただくことになりました。

最近はインターネットなどで医療情報が氾濫しておりますが、その情報の質は玉石混淆で、あふれる情報の中で逆に何を信用してよいのか分からなくなってしまっています。ここでは医学的に根拠があり、科学的に証明されているものだけを分かりやすく、役に立つ話題としてご紹介したいと思います。

なるべく毎月発行したいと思いますが、診療の合間に原稿を書きますので、不定期発行となりますことを予めご了承下さい。またご意見、ご質問などがありましたら下記アドレスへメールを戴けば、今後の編集方針の参考にさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

greenwoodclinicinfo@yahoo.co.jp

季節の話題(1月)

寒い日が続きます。しかしこの寒い中でも植物は春の準備を着々と進めています。春になると木々は芽を吹き新しい命を萌芽させます。その生命の息吹は感動的ではありますが、反面私たちにとっては「花粉症」という厄介な問題も生み出します。特に立川を含む西東京では奥多摩のスギ花粉の飛来が多く、花粉症に悩まされる患者さんが多いのが事実です。花粉症は花粉という微粒子が鼻や眼の粘膜に付着し、そこでアレルギー反応を起こすことによって起こります。

花粉症対策には3つの方法があります。一つ目はメガネやマスクなどをして物理的に花粉が眼や鼻の粘膜に付着しないように防御することです。最近は専用のマスクやゴーグルが市販されています。もう一つは減感作療法と言ってアレルギーの原因となる物質(スギ花粉)を少しづつ注射して体にならしてやる方法です。アレルギーの根治的治療でありますが数か月間以上の通院が必要です。

そして最も一般的と考えられる方法が抗アレルギー剤を内服する方法です。抗アレルギー剤はどれが一番良い薬というものではなく、自分のアレルギーと相性の良い薬を見つけることが肝心です。去年飲んだけれど効かなかった、といって治療をあきらめる必要はありません。また第二世代とよばれる薬は眠気が少ないという利点があります。しかし抗アレルギー剤は症状が出現してから飲み始めるより、花粉の飛来開始の3〜4週間前から飲み始めたほうが効果があるということが分かってきました。今年の東京地方のスギ花粉の飛来は2月10日ごろからと予想されています。そろそろ私たちも春の準備を始めたほうがよさそうです。

身近な健康知識

第1回 意外な皮膚がん

がんというと死に至る何かとても恐ろしい病気のように感じます。しかし適切に対処すればなんら恐れることはありません。問題は皮膚の病変ががんなのかどうかを見分けることが一般の方にはすぐにはできないということです。

右の左上の写真は60代の男性ですが、「かみそりまけ」と思い市販の軟膏を塗っても治らないとのことで来院されました。

右上の写真の方は調理中にやけどをされたとのことで来院されましたが、鼻に医学的に気になる「ホクロ」がありました。お二人とも組織検査をお受けいただいた所お二人とも「基底細胞がん」という皮膚がんでした。

基底細胞がんは皮膚がんの中で最も頻度の高いがんであり、幸いなことに最も治しやすいがんでもあります。上記のお二人は拡大摘出術をお受けいただき、無事がんを克服され現在もお元気です。

皮膚は体表面の臓器ですから最も早期からがんが発見できます。また手術も比較的安全に行えます。哲学者のキルケゴールは死に至る病とは絶望であると述べました。皮膚がんは絶望することなく適切な治療を行えば治癒する病気です。

コラム「美」とは何か?

第1回 意外な皮膚がん

院長は日本医科大学で医学部学生や若手医師の指導を行うと同時に早稲田大学で「美」にまつわる哲学的講義を担当しています。ここではその講義内容を分かりやすい形で連載したいと思います。まずは美の起源について筆を進めたいと思います。

この地球上に「美」はいつから出現したのでしょうか? 記録としては古くから人類が美について記述しています。まず日本神話では天照大神が天岩戸に隠れたのち、人々の願いと神々の工夫で岩戸から顔を出し、この世に光が復活したとのエピソードがあります。

人々は天照大神が隠れていた間悲嘆にくれていましたが、大神が顔を現したその瞬間喜びと希望に満ちあふれました。この時の天照大神のことを日本書紀では「あな面白し」と表現しています。これは顔が神々しく輝きとても美しく良かったという意味です。

顔(面)が白いということは「良い」ことを意味しました。「面白い」という言葉は今では滑稽であることを意味しますが、当時は文字通り「顔が白く美しいこと」そしてすべてにおいて「良い」ことを意味していたのですね。一方、お隣の中国では「美」という文字を「羊」と「大」から合成しました。大きな羊は神への犠牲(生贄)として形態的に望ましいという意味でした。大きいことが美しいことだったのですね。

古代エジプトでは王は太陽神の生まれ変わりでしたので自ら太陽を表すメイクアップを施していました。眼のまわりを黒く塗ることは太陽の輝きを表わしました。また貴族の間では牛乳風呂に入って皮膚を美しくすることが行われていました。これは現代のケミカルピーリングと同じことを行っていたわけです。

ケミカルピーリングというのは皮膚表面に薬品を塗布して皮膚を磨く方法です。皮膚表面をすべすべにし、くすみやこじわに効果があるほか、最近の方法では特にニキビに対して有効です。牛乳の中には酪酸という弱酸が含まれており、古代エジプトの方法は科学的にも効果があったであろうことが推測されます。

このようにヒトでは古来から良好な形態すなわち「美」を意識していました。形態的に良好であることは機能的にも有利であり、遺伝の観点からも望ましいと考えられますがその点についての考察は稿を改めたいと思います。
次回はヒト出現以前の美について考察します。

今日は何の日?
1月1日
  • アトムの日
  • 1963年1月1日放映開始、ちなみに誕生日は2000年4月7日
  • 北多摩郡国立町市制施行(1967年1月1日)
1月7日
  • 爪切りの日
  • 新年最初に爪を切る日
1月14日
  • 愛と希望と勇気の日
  • 南極観測隊が置き去りにしたカラフト犬のタロとジロが翌年南極で発見された日
1月23日
  • 電子メールの日
  • Eふみ(1・23)のごろ合わせ

そこが知りたい!

以前に比べて身近な存在になったとはいえ、レーザーはまだまだ正体不明の存在であろうと思います。そこで今回はレーザーとは何かについてご説明します。
レーザーとは光の一種です。1900年にアインシュタインがその存在を予言し、実際にこの世の中にレーザー光が誕生したのは1960年のことでした。レーザー光は天然界には存在しない、人類が人工的に作り出した光なのです。この光は自然光とは異なるいくつかの性質を持っています。その代表的なものが「レーザー光は単一波長である」というものです。

たとえば雨上がりには虹ができ ることがあり ます。虹は 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫 の7色からなりますが、これは自然光が色々な波長(色)から成り立っている光だからです。これに対してレーザー光はただ一つの波長の光からなるので、もし太陽の光がレーザー光だったらこの世に虹はありませんでした。人類はこの単一波長の光を様々な分野に応用してきましたが、皮膚・美容領域も例外ではありません。例えばシミ取りのレーザーがその代表です。物質は光を吸収して吸収された光エネルギーは熱エネルギーに変換されますが、光を吸収する割合は波長によって異なります。例えばアレキサンドライトレーザーの光はメラニンという生体内の黒い色素に非常に高率に吸収されますが、皮膚(真皮)の主成分であるコラーゲンにはあまり吸収されません。

ですからメラニンを含む皮膚にこの波長の光を照射するとメラニンは光を吸収し、とても熱くなるため破壊されますが、コラーゲンはそこまでは熱くなりません。だから皮膚にキズをつけることなく、しみがとれるのです。もしレーザーでない光を照射してメラニンを破壊しようとすれば、コラーゲンに吸収される波長の光を含んでいるかも知れず、従って選択的にメラニンだけを破壊することが出来ません。

またいくらレーザーの波長がメラニンに選択的に吸収されるとは言っても、長時間光を照射し続けると、メラニンに吸収された熱が周囲組織に伝えられ、メラニンでない組織も熱破壊されてしまいます。ですからしみやあざなどの治療ではQスイッチアレキサンドライトレーザーという光の照射時間が極めて短いタイプのレーザーを使用します。

一方、脱毛レーザーではロングパルスアレキサンドライトレーザーといってむしろ照射時間が長めのレーザーを使用します。というのは毛を作る細胞それ自体にはメラニン色素を含んでおらず、それは毛(メラニンを含む)の周囲に存在するからです。ですからロングパルスアレキサンドライトレーザーを毛の生えている部分に照射するとレーザーはまず毛に含まれるメラニンに吸収され、ついでその熱がメラニンを含んでいない毛を作る細胞に伝えられこれを破壊することになります。照射時間を調節してやればそれ以上の組織破壊は起こらず、皮膚に一様に照射しても毛根だけが破壊され、脱毛が可能になるということになります。

緑の森から

グリーンウッドスキンクリニックを開業してから約2か月経ちました。当方の予想を上回る反響があり、驚いていると同時に、責任の大きさも痛感しております。開業当初からこのようにご支持いただけていることに感謝し、今後もなんとか地域医療に貢献したいと決意を新たに致した次第です。このコーナーではクリニックの裏話(というほどでもありませんが)を披露し、皆様に少しでもグリーンウッドクリニックを身近に感じていただこうと思います。

さて、どうしてこのクリニックの名前がグリーンウッドなのかについては案内パンフレットにも記載しましたが、私の苗字が青木だからです。でもだったらブルートゥリーではないか?との質問もよくあるのですが、日本語の青は必ずしもブルーではないのです。信号機の色も私たちは青といいますが、実際にはどう見ても緑色ですね。木の葉っぱの色もブルーではなくグリーンなのです。実際にアメリカにはグリーンウッドという地名がいくつかあるようです。私はシドニー留学時代にグリーンウッドという中華料理屋に行き、その時からこの名前が頭の片隅にあった、というわけです。

さて創刊号はいかがでしたでしょうか? 次号以降もよろしくお願い申し上げます。

  • 形成外科・皮膚科・アレルギー科・美容外科
  • グリーンウッドスキンクリニック立川
  • 青木 律:医学博士 形成外科学会認定専門医
  • 青木恵理:医学博士 皮膚科学会認定専門医/アレルギー専門医